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「東電福島原発事故 総理大臣として 考えたこと」菅直人著① [書物]

幻冬舎新書

2011年3月11日
私たち日本人は、未曾有の天災と事故を体験した。
こちらでも、このことの意味を考えたり、また、原発事故とその背景にあるうっそうとした事々について、あれこれ述べさせていただいてきた。

この書物では、その災難の只中で、日本国の総理大臣だった菅直人氏の、当時の回想と、それに伴う脱原発への思いと訴えかけ、が綴られている。

人間とは不思議なもので、私にも、原発事故があったとき、大丈夫、危険はない、そう思おうとする、思い込もうとする心が働いていた。テレビで安全だ、という学者の話を聞いてほっとしたり、まさかメルトダウンはないだろう、と思ってみたり。現に、報道でも、そういった危険性については、全く発表されていなかった。

しかし、この書物を読むまでもなく、すでに、私たちは、もうあの爆発直後から、メルトダウンが始まっており、非常に危険な状態にあったことを、知り得ている。

そして、そんな恐ろしい時のなか、11日翌日から、計画停電や物資不足によるいささかの困難はあったものの、東京では、普通の生活が営まれていた。

菅直人氏は、これまでにない、危機の状況を、日本の最高責任者として体験することとなった、今のところ、唯一の人物だろう。

これを読むと、どれほど恐ろしいことが起きていたのか、が伝わってくる。

斜に見る人々のなかには、こんなこと書きやがって、かっこつけやがって、とか、お前のせいだろう、などと評する人々もいることだろう。
それも致し方ない。なにしろ、総理大臣だったのだから。

最近になって、東京電力から、当時の音声つき映像が公開されたが、菅直人氏のこの回想も、見過ごすことはできない、と感じる。

東北から東京までの5000万人もの人々をどこへどう避難させるか、そして、天皇陛下に、いつ皇居から避難していただくか、それをずっと考えていた菅氏の当時の思いが伝わってくる。

日本は狭い、アメリカやロシアのように、どっと移動できる場所がまずない。
その上、別の原発に事故が起きれば、日本列島は汚染列島になる。
さらに言えば、中国や韓国の原発に何かあれば、放射能は全部日本へ流れてくる。
日本人は、よく考えたほうがいい。
今、ようやく原発事故を想定した避難訓練が行なわれはじめたが、かなりひどい状況までを想定して、日本人を受け入れてくれる国がどこかにあるのかどうなのか、も考えておいたほうがいい。国には、そこまで考えてほしい。肉体を持った人間が、物質的不具合のなかで生きていくことは、まこと苦しく厳しいと言えよう。
廃炉にしたとしても、放射性廃棄物はずっと残っているのであり、事故の危険性が全くなくなるわけではないのだ。

そう考えてくると、原発を推進するという選択肢がいまだ存在している、ということがまこと信じ難いことである。

今、まるで、何事もなかったかのような雰囲気さえ漂い、選挙の争点にはしないなどと言っている自民党議員もいるなかで、私たちは、さらに深く、原子力発電というものに思いを致すべきではないか。

次回へつづく・・・・

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