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『僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか』 [書物]

荻上チキ著 幻冬舎新書

荻上氏は、以前、テレビ朝日「朝まで生テレビ」にて、古市憲寿氏に対しておとなげない発言をした。それ以来、私は、荻上氏をよく思っていない。否、それ以前から、ペラペラペラペラと絶え間なく喋る口調が、私には、心地よくなかった。

では、なぜこの本の感想?

荻上氏が、政治に対するまとめ発言をしていないので、今回の政党乱立と総選挙に当たって、思想をまとめたいということで書いた、と言うので、読んでみようと思い立った、というのが経緯だ。

実は、この記事、とてもたくさん書いた。
しかし、思わず、データを消してしまった。とってもたくさん書いたのに、だ。
そして、これは、書かなくてもよい、ということだな、と理解し、端的にだけ、述べることとした。

第一章では、戦後政治のこれまでの様相が述べられている。55年体制、派閥、族議員の発生と陳情、それにともなう票田など。

第二章では、消費税増税を根底に、財政のあり方を述べている。増税の前にやらなければならないこととして言われている、議員の定数削減や歳費削減、公務員給与、無駄遣いの削減は、間違った議論だ、と述べている。そこから得られるものは微々たるものだ、と荻上氏は言う。
そうだろうか?
お金のことだけで言えば、そうかもしれない。その通りだろう。だったら、景気を上げたほうがよい。しかし、私は思う。増税の前にやるべきことがあるだろう、には、政治家や官僚、公務員、あるいは電力会社も含めた大企業の、心の態度が問われているのではないか、と思う。
民主党が言っていた「コンクリートから人へ」は、バール信仰から心を取り戻す、ということではなかったのかな。このスローガンをかかげた民主党自身も、そこまでクリアな思いに気付いていなかったかもしれないが、無意識により高い精神性を求める気持ちが働いている人々だったのだろう(もちろん全員とは言わないが)。しかし、政権を取った途端、残念ながら、どっぷりとした権力のなかに埋没してしまった。

第三章では国民益より省益を考える官僚、省庁の仕組みが間違っていることを提示。マスメディアも、それに加担している、と言う。また、スポンサーとメディアの関係の問題も提起。
これは、全く、同感である。
心の変革ができない官僚たちには、仕組みそのものを変えて、良き方向へ自然と心が向くように仕向けなければならない。しかし、メディアは、そうはいかない。物事を認識して発信する立場だからだ。自らの良心を見直すときが来ているのではないか、と思う。

第四章は、「僕らはどうやってバグを取り除くのか」という章題。これは、私の心には全く響かないし、なんと言うか、やるせない。これが彼の考え方なのか。彼のこれまでの活動や発言から、いささか歪んだ心持ちを感じていたが、やはりそれはここにも出ている(ここでは具体例をあげません)。

第五章は、「僕らはどうやって社会を変えていくのか」という章題。あれこれ書いてあるが、結局は自分の活動の宣伝と自慢か。

全体を通して言えるのは、彼の思想の根底にあるのは、唯物的感覚、ということだ。
心を、思いを一番に大事にする人を間違っている、と思っているようだ。
心では、経済は復活しないし、病気も治らない、と。

とても寂しい書物だった。
読まなくてもいい本だ。
しかし、物質的価値観を持っていて、自分は頭が良く理解力に富んでいる、と思い込んでいる人が、どうような思考パターンを持っているのかを知るためには、よい参考書になるかもしれない。
基本的には、お勧めしない。

あ、そうだ。
副題に『絶望から抜け出す「ポジ出し」の思想』とあるが、何が「ポジ出し」だったのか?・・・分からない。
結局のところ、唯物的でない思考、心や思いを大事にしながら変革を求める発言、精神論による政治家のあるべき姿への提言が「ネガ出しだ」と言いたいのだろう。

追伸
なぜか、古市氏への反発、反論めいた発言があることに、思わず微笑んだ。
おそらく、念頭にあるのだろう。まさに、上記副題の絶望から抜け出す云々は、古市氏の著書の題名、テーマそのものを思い起こさせるものだ。
その古市氏の著書「絶望の国の幸福な若者たち」のなかで、
『現代社会に必要なメディアリテラシーのあり方を考え続ける評論家の荻上チキ(30歳)は、震災直後から自分のブログで、ネット上で広がるデマをまとめ、その検証を続けていたのだが、みんなが一番気になる原発問題に関してはほぼ沈黙を貫いた』(P214)
などの言及がされていることに怨念があるのか?

上記の検証については、次回、「絶望の国の幸福な若者たち」の感想記事にて、比較して書かせていただきたいと思っています。

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